「あ〜ぁ」「やっちまった」

「けっこう貴重なもんらしいぜ
やばいなぁ…」





「やる気はあるのか!!ギース!!
お前クラスでビリだぞ!!」
「23秒なんて…
クラス平均100mで15秒なのに…」

「そんなに大きな翼があるのに
なぜだ…!?」

「何も知らないくせに…」

「オレたちよりも速く飛んだら…」
「わかってるな…?」
「絶交だからな…!!!」





「ほら! 持て!!」

「一緒に帰りたいんだろう? ギース?」
「お前翼でかいんだから
コレぐらい当然だ」
さあ持て

「う… うん…」

「なあ こっから秘密基地まで
飛んで競争しよう」
「ギースはここまでで
三人だけならいいだろ?」

「…あ あの…」
「ぼくは?」





「やだね」
「お前と競争なんかしたら
オレら負けるに決まってるだろ?」

「え?」

「そんなに一緒に遊びたいなら
秘密基地に来い…」
「ただし…」

「夜になったらな」





ば〜か!!
まってるわけ ね〜だろ

「誰もいない…」

「・・・・・」
「帰ろう…」





「でも… ぼくは…」

「空を飛べれば…
それでいいと思う…」





「僕には それしかないから…」

「!!!」

「ぶつかるっ!!!」





「うっ…」「ううっ…」

「痛て
なにかにぶつかったみたい…」

「一体なんだろ…」

「・・・・・u」





「!!!」

「いや〜…」
「また失敗…
また失敗…」

「あの〜…」
「あなたは一体誰?」

「俺か?」「俺はな…」

「その名も 銀狐(シルバーフォックス)の“グラナ”」
「世界を守る“フィクサー”だ!!」





「・・・・・」

「ゴメン…」
よくわかんない」
フィクサーって何?

「いいんだ…」

「いいんだどうせオレなんか
どうせわかんないんだフィクサーとか…」
「小さい頃からフィクサーフィクサーで
バカにされ続けてここまで来たんだ
どうせどうせ…」

スネた…?「・・・・・u」

「悪魔?」「退治するの?」

「まぁな」
「正確には理魔(ハイゼン)という種類の悪魔で」
「今はもう封印され
オレはそれを点検して回ってるんだ」





「封印って… 閉じ込めるの?」
「まあ… そんな感じ」

「基本的に…
理魔ハイゼンを封印して
入れておく器・・・・・・はなんでもいいんだ。
壷でも本でも剣でも」
「ただ何世紀も昔にされた封印だから
その器の多くは文化遺産なんかになっていて
博物館に飾られている」

「オレが今回点検しに来たのは
石像に閉じ込めた理魔(ハイゼン)だ」
「壊れたら封印が溶けてしまうから
危ない場所から遠ざけたり
ヒビを直したりするんだ」

「理魔(ハイゼン)を閉じ込めた“器”は世界中のあちこちにあるから…」
「それを回るフィクサーは大変な仕事なんだよ…まったく…
「ふぅ〜ん」

「それじゃ」

「ぶつかって悪かった」
「オレは仕事があるから行くぜ
気をつけて帰れよ」





「結局なんだったんだろう?」
「なんで空でぶつかったのかも
わかんなかったし…」

「帰ろ…」

「今なんて言った!!?」

「テメェが近くにいるとムカつくんだよ
っつったんだ!!!」





「次の日…
教室中が仲悪くケンカしていた…」

「あの三人も…」

「それはなぜか一日中
おさまることはなかった…」

「ねぇ みんなと一緒に
帰らないの…?」

「いつもみたいに三人で…
秘密基地に飛んでいったりしないの…?」
「仲良く… しないの? ねぇ?」

「一人で帰る」





「なにかが… 確実に…」

「狂い始めていた…」

「あの三人も…」

「ギース ごはんは? (母)」
「あとで」
「ちょっとでかけるね」

「このままじゃイヤだ!!!
みんなの家に行って
せめて話だけでも聞いてくるんだ!!!」





「ボクはただ
空を飛べればそれでいい」

「でもそれは
夢のため…
いつかみんなと…」

「みんなと一緒に空を飛びたいから」

(一緒に…)

「危ないっ!!!」





「またかいっ…!! Uu」

「おおっ…
いつかの翼(はね)デカ少年!!
また すまんな!
「ボクはギースだよ…」
イタイ…
「何かあったの? グラナさん」
「それが… 大変なんだよ!!」

「理魔(ハイゼン)の封印が解けちまってた!!!!!」
「!!!!」
「・・・・・」

「ゴメン… よくわかんない」
なんか大変なの…?
「・・・・・」
…そ






「理魔(ハイゼン)には様々な種類がある」
「そしてそれらの共通点は
どちらにしろ世界の気持ちを喰っちまうこと」

「お前 暗黒時代って知ってるか?
知らないよな…」
「づっと昔に科学の進展が止まってしまった時期があったんだ」
「有益な書物は焼かれ
知識人は片っ端から捕らえられ
末は
地球の空はドームってぇ分けの分からない知識が
広められたような そんな時代だ」

「しかしそれらは実のところ
“好奇心”を喰らう理魔(ハイゼン)によって」
「“好奇心”を喰われてしまったから引き起こされたんだ」

「・・・・・」「本当なの?」
「全部ノンフィクション」

「そして今回封印が解けてしまったのは」
「“友情”の理魔(ハイゼン)だ!!」





「お前も見たはずだ」

「理魔(ハイゼン)によって友情を奪われた奴等の目を…」

「理魔(ハイゼン)によって喰われてしまった感情は
その理魔(ハイゼン)を倒さない限り
二度と復活することはない…」
「そ、そんな! じゃあ…どうすれば…悪魔なんて…」

「だから オレ(フィクサー)がいる」

「理魔(ハイゼン)がどこで生まれ どうやって封印されたのか
それはわかっていないが
理魔(ハイゼン)の封印を守る“フィクサー”という役目は
何百年も前から代々世界に一人だけに受け継がれて
続いてきた天職だ」





「実のところ―――」

「暗黒時代に覚醒してしまった“好奇心”の理魔(ハイゼン)を倒したのが
オレの父親(オヤジ)だったんだ オヤジは純血の妖孤だった」

「そのオヤジも普通の狐と結婚してオレが生まれた。
そしてその後すぐ」
「オヤジは死んで
今じゃオレがフィクサーやってんだ」

「オレは偶然
ただの狐に生まれフィクサーの息子に生まれた」
「でもオレはこの姿を役目を誇りに思う。
オヤジの残してくれたこの姿と役目だから」

(ボクは そんなふうに考えたことなかった…)

「この背中のロケットはオヤジの残してくれた形見・・・」
「そして唯一理魔(ハイゼン)を粉砕できる武器だ!」

「だから誓う」
「友情は必ず取り戻す!!!」





「お前は帰れ… 理魔(ハイゼン)のことはフィクサーにまかせろ」
「オレのことはくれぐれも世間には内緒にな!
めんどうだから…

「待って!!」

「ボクも一緒に理魔(ハイゼン)を倒したい!!」

「!!!」
「お前聞いてなかったのか!? 相手は悪魔なんだぞ!!」
「遊び(ゲーム)じゃないんだ!!」

「ボクは本気だよ…」
「このままみんなが冷たいのはイヤなんだ」

「ボクには夢がある」
「いつか…
みんなと空を飛びたいと思ってる
この大きな翼でみんなと一緒に…」





「だから何にかえても」

「絶対に友情(それ)は守りたい!」

「・・・・・u」

「…わかった」

「ただし」





「覚悟はいいな?」

「よしっ
では早速 連いてまいれ!」
「うんっ!」

「この先祖代代伝わるらしい
ロケットエンジンで
ひとっ飛びだ!!」





「使い方間違ってるんじゃないの?」

「っるせぇ!!!
コレがオレのやり方なんだ!!!」
こーやって 海越え
山越えたんだ!!

「頑丈な体だねぇ…Uu」
「ボクの翼で飛んでいこうね…」





「朝日が昇りやがった…」

「探すんだ!!
奴は必ずこの街にいる!!」

「今日の夜までに奴(ハイゼン)を何とかしないと…」

世界中の“友情”が喰われる…!!!











「!!!!」

「がっ…」「ぐっ…」





「つまり“場”に行けば理魔(ハイゼン)はいっぺんに
世界中の人の“気持ち”を食べられるってこと…?」
「そうだ… お前けっこう頭いいんだな

「理魔はな封印が解けた時点ではE0P(エネルギーゼロ)の状態
つまり腹ペコで“場”に行くまでの体力もないんだ
だから少々腹ごしらえが必要…」

「オレが石像の破損を確認したのが昨日の夕方…
その時は少し修復されていて おそらく…
壊れたのは3日前」
「3日あれば理魔(ハイゼン)は十分な体力をつけてしまう…!!」

「とにかく時間がない…!!!」
わかったから
あばれないで

「お前この町に詳しいよな!?
“場”の写真見せるからそこまで案内してくれ!!
そこで理魔を待ち伏せしよう!!」
「う… うん… Uu」

「わっ!?」

「うぅ…っ なんかイヤだなぁ…」
「早くっ!!!」





「どうした? わからないか?」
「ううん だいじょうぶ」

「ここなら 行けるよ すぐに…!」

「ほら すぐ着いた」
気持ち悪… 速過ぎ…」

「まだ 来てないみたいだね」

「わかるのか?」
「グラナさんを友だちだって思えるから」
「そう… よかったよ





「そういえば“場”ってココだけしかないの?」
「いいや世界中にいくつもあるが
ここいらはこの遺跡しかない
だからあとは理魔(ハイゼン)を待つだけなのさ」

「待つだけ?」「そ。理魔がここへ入らないようにな」

「夜になったね…」「ああ…」
「理魔(ハイゼン)…
来ないね…」
「ああ…」

「こうしてるあいだにも…
友情は少しずつ食べられてる…」
「なぁ? ギースとかいったかな…」

「お前友達いないだろ?」





「な…Uu」
「ま 仮にいたとしてもロクな関係ではないことはたしかだ
パシリとかな…

「わかるんだよ …似てるから」
「特別な“力”を持ったヤツの行き末…」

「…!」

[フィクサーだかなんだか知らないけどさ…]
[あいつ いばりやがって クソッ…]
[親が妖孤だからってさ… いい気なもんだ!]
[あいつとは友達にならない 絶対…!!]

「生物とは常に力あるものをねたみながら生きているんだ…
だから争いや差別が地上から絶えない」
「オレだって正直オヤジからもらった“誇り”がなければ
フィクサーなんてとっくにやめてる
そのせいで友達ができなかったんだからな…」

「だから正直…」





「お前に“友達”って言われた時…
ちょっとうれしかった」

「・・・」
「思うに…
お前はその翼以上に“やさしさ”も大きすぎるんじゃないのか?
夢か何かあるそうだが…」

「もう少し他人の身勝手を知ったほうがいい…
どうせ飛ぶ時も本当の“力”を抑えてるんだろ?
エセ友人のために…

(初めて…
“友達”だって思ってもらえた
ボクと…)

うれしい…
「それでもボクは…」





「友情を信じたい」

「ううっ…(泣) ええ子(コ)やぁ!!
おふくろに会わせたいわ…
「ちょ… なんで泣くの!? はずかしいよ…」

「ううっ…(泣) オレはいい友達を持ったんだなぁ…」

「!」
わしゃうれしいよ…
(あれ…?)

(光ってる…!?)
教えよっか?
(てか、気付いてよグラナさん…)





!!?

「どうして… ここに…?」

「どう して…  ここ に…?」





「わからない…」
「でも・・・」

「スゲェー・・・ 寂しい…」

「みんな…
ここは…」「ギース!!!まずいっ!!奴だっ!!!」

!!!





(あいつが… すべての元凶…!!!)

「聞けギース!!
“場”はこの台座だ
奴はここを狙ってる!!!」
「!」
「絶対近づけちゃならねぇ!!!!
お前はあの三人をなんとかしろ…!!

「オレはこいつで…!!!!」





「くらえ!!
必殺頭突き!!!」





「やった! 砕(くだ)いたっ!!」

「!!!」
そんな…

「グラナさん!!効いてないよ!!
もう一度…」

ちょっと無理…

「・・・!」





「!!!」





一歩でも…

あいつをここへ入れたら…
…………・・・

世界中の“友情”が …消えてなくなる!!!

絶対…

わたすもんか…!!!!





「なあ? ギース」

「お前だって腹減るだろ? 死にそうになるだろ?
喰わせてくれよぉ… なぁ ギースぅ…」

「お前なら友情がなくたって困らないだろ?
友達いないもんな…」
「守ってどうする オレに喰わせてくれよ…」

「なぁ ギース?」





(心を読まれてる…!!)
「ボクにはちゃんと友達がいる!!」

「そう思っているのはお前だけだ…!」

(―――負けちゃダメだ!!!!)
「お…
お前なんかにわかるもんか!!!!」

「ボクはみんなに友情があると信じてる!!
それがボクにじゃなく
他の誰だとしても それでいい!
それ以上の理由が欲しいなら…
それは・・・」
「それはボクが…」

「ボクがフィクサーだからだ…!!」





「お前も… やっぱり邪魔するんだな…」

「一つ…!!」
「いいことを教えてやろう!!」

「友情は…!!!」

「!!!!」

「こうやって 焼いて喰うんだ!!!」





「お前の精神も焼き尽くしてやるっ!!!」
「くらえぃ!!!」

「ぐっ!!!」











「精神(こころ)まで燃え尽きろ!!!!」





「ぐっ…
ぐあぁ"…」





「ギース…」

「ちっ!!」

(あの大火力で耐えたとは……!!
…なんという強固な心!!!)

「…みんな 無事だね…
よかった」





「・・・・・ どうして… 助けた…?」

「一緒に 空を飛びたいから」

「いままでこの翼のせいでみんなと仲良くできなかった…
だから正直こんな大きな翼嫌いだった…
でも今は違う!」

「この翼だからみんなを守れた!
生まれて初めて思ったんだ…」
「翼が大きくて
よかった!」





本当によかった…

バカな…!!!





(本気で… そう思っているのか…!?)
(いくら精神自体が燃え尽きなかったとはいえ
“友情”は燃えてしまったはず…
ヤツの“友情”は燃えないのか!?
それとも無尽蔵なのか!?)

(今まで喰ってきた この…
腹の足しにもならないクソみたいな“友情”は
一体なんだったんだ…!!?)

(アイツは… もはや…)

(脅威だ…!!!!)

「へっ…
そんなことでテメェの翼のありがたみが
わかるなんて…」

「お前も相当使い方間違ってるぜ…!」





「へへ…」

「!」

ちょっと待って…

唯一粉砕できる武器だ         
使い方を…    
           使い方間違ってるんじゃないの?
こーやって             
    間違ってる…!?
ひとっ飛びだ     
 理魔のことはフィクサーに

「グラナさん…」





(くだらん…!!!)

「くだらん…!!!!」





「友情など…」
「友情など
オレに喰われるために
燃えてなくなればいい!!」

「オレに喰えない友情などあってなるものか!!!」

「こうなれば
お前ごと喰ってやるっ!!!!」





「友情は…

お前が喰いきれるほど

小さくなんかない!!!」























pipi… pipi… pi…「…もしもし?」

声はまたつながる
今かけようと思ってた
「今日はゴメンね…」

カタ カタ カタ…―『わかった_』
心は届く…

街はひとりじゃなくなる





友情は… 取り戻した

「ゴメン…」

「お前の翼がうらやましかっただけなんだ…
どうしてもそれを思うと仲良く出来なかった
許してくれ…」

「!!」





!!!

「ちょっと…
腹立った…!」

「…でも」





「正直に言ってくれて…
うれしい」

「寂しかった すごく寂しかった…
いまもよくわからないけど…」

「いまでもはっきり覚えてるんだ…」

「ただ…」





「夜になったら 秘密基地(ここ)で…」

「お前に会えると思ったんだ」





たとえ…友情は奪えても……

寂しさは消えないんだ






「Ya−Ha(ヤーハー)!!」
「新しい翼は調子がイイねぇ!」

「おっ」
「そういえばアイツから手紙が来てたな…
どうしてるカナ?





※一人でもボケます

グラナさんへ…
ですか? ボクは元気です。
から1ヶ月たちますね、
はみんな仲良くしています
かもしれないけどがん

(ヘッタな字だな ぉぃ… Uu)

ボクはこの翼とグラナさ
みんなが大好きです いつまでも一緒だよ

ギースより
「ん?」

いつまでも
(一緒か…)

「そっちは頼むぜ… フィクサー!」





みんな元気です
(もう届いたかな? 手紙…)

「おい!ギースおいてくぞ!!」
「あっ」

「まってよぉ!」

#-Fin-#



[ちなみに理魔が同封されています
反省しているようなので世話してください]

「キャー」
「なぜだ!?」



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