昔から…
最強の盾を持つと言われる
“風の騎士団”がいた

しかし…
戦いに敗れた者は口を固く閉ざし
最強の盾の正体を知る者はなかった…





「生き残ったやつでもなぜか
そのことを話そうとしない」
「そういうわけで風の騎士団の盾を
知ってるやつはいないのさ」

「悪いこた言わねぇ…
探ろうなんて思うな」
「ロクなことはないぞ」

「じゃあどうして客なんか乗せてるんだ?」

「ああ…」
「騎士団の仕事が少なくなって金に困ると
ああやって飛行船を利用してさ
旅客機みたいなことをしてるんだよ」





「お急ぎください!
そろそろ出発の時間になります」
「タラップを格納します!!」











(最強の盾だと…!?)
(そんなものがあってたまるか…!!)

(破壊してやる…!!!)











「・・・・・・・」





「なっ…」

「なんだああぁあぁあぁ!!?」
「さ、再生したぞ
どうなってんだ!!?」

「おやおや…」
「!?」
「扉には鍵をしたはずですが
どこから入って来たのか…」

「見てしまいましたか
…私たちの盾の秘密を」

「・・・・・」
盾…?





「つまりは
そう…」
「あの竜が風の騎士団の誇る
最強の盾なのだ」

「不死身の竜が攻撃を全て受け、その一切を無効化する」
「我々はあの盾のおかげで数ある騎士団の中でも
上位に位置付けられているのです」
「そしてそれを初めて騎士団以外の者に見られたというわけだ…」

「見られたからには…」

「騎士団に入ってください
お願いします…」





「けっきょく働くことになっちまった…」
「文句言わずに手を動かせ雑用!」

「!」

「いつもああやって盾になりに行くんだよ
あの竜は」
「今日はモンスターだが反乱軍と戦うこともある」





「あの竜は実際すごく貴重だよ何せあの盾のおかげで
われらは五大騎士団間近の上位騎士団でいられるんだ」

「あの竜はわれらの所持物だめったなことで傷付けたりしないでくれよ」
(物だと… こいつら…)

(誰にも… 物なんて 言わせない…)

…い
「おいっ!雑用!!」

「食糧だ運べ!」
(たいそうな上位騎士団だ…)
スゲェ貧乏ぶり…











だいじょうぶか?
うん…だいじょうぶ たいしたことないよ

いつからだろう…
うらやましいなんて感情を
もつようになったのは…





その後…
騎士団の仕事が増え
客は乗せることなく各地を転々とした

何度も続く仕事のたびにアイツは傷だらけになって帰ってくる

そのたびに不思議に思うんだ…

なぜ…
笑っていられる

オレは雑用をこなしながら…
「?」

「た、隊長に ほれるなよ!!?」
「は?」





「こんなところにいたのか…」
「!」





「なんでこんな所にいるんだ?」

「・・・・・」

「今日は… ボクの月が五年に一度一番近付く日なんだ…」
「どうしても見たくて言いつけ破って牢屋出ちゃった」

(月…?)
てかコイツしゃべれたのか…
「キミは… たしか雑用
新しい人だよね
渡したい物があるんだ」

(どこから出してんだ…)





「作業しやすいように」

(嗚呼… オレの地位って…)
どう?
ぐんて…


「なぁ ちょっと聞いていいか?」
「え? いいよ」

「なんで 笑っていられる」





「わかんない…」
「!?」

「でもね…」
「ボクは辛くないよ」

「隊長さんや騎士団のみんなはとってもやさしいし」
「ボクの体が傷ついてもボクはちっとも痛くないよ
だってボクは盾だもん」

「たしかにボクの体は他の人よりちょっとケガ治るの早い」
「でもねそれはボクが治してるんじゃない…」

「きっと…」
「それは
きっと…」





「愛の力なんだ」

「みんながくれる愛の力…」
「だからボクは辛くない寂しくない」

「ただ…」

「ただちょっと…」
「月に帰りたいって思うことがあるだけ…」

「それだけ…」
「みんなには言わないでね
…心配かけたくないから」





「い… おいっ! 雑用!!」
「…!」

(けっきょく寝ちまったのか…)
「どうした? 隊長?」

「なんだソレ…?」





「ちょうど五年前…」

「騎士団を始めたばかりの我々は…
仕事先で偶然ある物を発見したのです」

「そう…」

「このポッドに入った竜だ!」
「我々はコレを回収し竜を保護したのだ」

「そして  竜の再生能力に気付いた我々は
その能力を… 盾として利用することを思い付いた…」





「盾の威力は想像以上に大きく
私たちはあっという間に そう…わずか五年」
「五年のうちに五大騎士団に次ぐ上位騎士団と
認知されるようになってしまいました」

「そこで私たちは他の騎士団にねたまれて傷つけられることを恐れ
竜を牢屋へ閉じ込めました それが…」

「やさしさだと信じて」

「入れただと… 物みたいに… 物みたいに…」
「そんなもの…」

「そんなもの」
「やさしさじゃない」





「いつから忘れてしまったのだろう…
昔は入団したら必ず…」

「これを配っていたんだ」

「銃火器やレーザー兵器を取り入れる騎士団が多い中で
我々はずっと剣だったので 手や指の負担を考えて昔は
この軍手を配っていました」

「戦ってボロボロになりそのたびに直したり
昔は大切に…しかし
決して壊れない物を手に入れてしまい…」

「私たちは本当のやさしさを忘れてしまった…」





「我々はそれを取り戻すため…
失わないために」

「竜を月へ帰します!」

「!!」

「あと30分もすればあの月はこのポッドでは
届かない距離まで離れてしまいます
今しかチャンスはないのです!」

「竜を…ポッドへ乗せてあげてください」
「それが…軍手を受け取り正式に入団したあなたの初仕事」





「でも隊長さんボクは…」
「いけよ」

「行って…帰ってこい!
待ってるのは牢屋じゃない…」

「あったかい家族だ」

知らなかった…

お別れが
こんなにも
うれしいなんて…

ちっとも知らなかった…





「!!!!」

「何事!!!?」
ポッドが…!!
ちくしょう!壊れない!!

「レーダーには“銀の騎士団”の船影を確認!!!」





「ぎ…銀の騎士団!!?」
「五大騎士団が一体何故!!?」

「引っ張られています!!!」
「サイドギア作動!!!」
「まずいぞ…銀の騎士団も剣タイプ…
しかも向こうには最強の剣“月の剣”があると聞いた…!!」

「一体…」「距離…残り30m!!!」

「残り20m…!!!」

「10…」

「衝突します!!!」





「戦闘態勢!!!」





「全員気を付けろ!!!」
「どこかに“月の剣”を持った剣士がいるはずだ!!!」





「“月の剣”は全てを斬り裂き
斬られた物は二度と元に戻らないと…」
「…!」

そういえば…
あの服どこかで…

「月の剣は…」

「ここにある」





「そ… それは…」

「どうしてオレの居場所がわかった?」
「!」

「キミの剣は月の鉱石でできている
成分は不明だがね
月の大接近する今日だけはレーダーに反応するんだ…
あと20分で消えてしまうから危なかったよ」

「…さぁ
こっちへ帰ってくるんだ!」





「オレが寝返ったと思って奇襲かよ隊長さん…」
「あいかわらず極端だな!」

「オレにしか剣がもてないからって毎日毎日
物みたいに使いやがって毎日毎日…」
「殺人や破壊を繰り返すのはもううんざりなんだ!!!」

「オレは望んで風の騎士団に入った!
剣が欲しいのなら力ずくで奪えばいい!!」

「やはり裏切ったな…」
「貴様の言うとおりに力ずくで奪ってやる!!」





「どうした…?
鞘に収めたままでは剣は使えないぞ…?」

「剣はもう使わない…」
「あんたも最強の盾が再生する瞬間を見れば
破壊するってことが馬鹿馬鹿しく思うさ」

「ふん… くだらん!」





「隊長!! 交代!!!」
「OK!!!」

「みんなを守らなきゃ…!!!
ボクは盾…
ボクは…」

「お前は… お前は帰るんだ!!
あまり時間が残されていない!!!」





「乗れ!!!」

「みんなを守らなきゃ!!」
「ボクが守らなきゃ!!!」

「守りたいか!? そんなに守りたいか!?」
「みんなも…みんなもそう思ってる!!!」

「今度はお前が守ってもらう番だ!」





「帰ってきたら真っ白なテーブルでみんなで飯を食おうな…」
「きっと うまいぞ…」

すげぇ 楽しみだ…





「知ってるか?」

「剣より…」

「愛のほうが強いんだぜ?」











すげぇ 楽しみだ…

な…





「五年も昔のはなしさ」

「おいおい 風の騎士団って言や四大騎士団じゃねぇーか!
それに銀の騎士団なんて聞いたことないぜ」
「本当かよその話」

「いろいろあってな 銀の騎士団は抹消されて今は四大騎士団…
まぁオレも今や酒場の店員…」
「信じられないのもわかるよ…」

「いつのまにか 忘れちまうんだな」





最強の剣と…

最強の盾を持った…

“月の騎士団”の歴史が始まる


〜Fin〜


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