「電波望遠鏡オープニングセレモニー?
なんじゃこりゃ スバル?」
「今度の練習はそこでしようよ ヤクト」

「なんでまた?」
望遠鏡だぜ?

「ボクが造ったんだよ」

「・・・・・
…は?」





「は〜…」

「えらい変な形したデケェ建物だなぁ…」

「だいじょうぶなのかなぁ…」

「?」





「それでは…」
「ここからは私 ファンドが」
「ここの責任者として皆様の質問にお答えします」

「ラム放送です …この電波望遠鏡は噂によると」
「三日で建造されたそうですが…本当ですか?」

「本当です」

「とは言っても…
各パーツは5年かけて作ってますから」

「半分はハズレになりますね」
よぉ よぉ





「スバルは?」
「ああ…
2番ゲートで待ってるとさ」

(ああそうか
どっかで見たと思ったら…)

(あのヒト スバルの父さんだ…)

(ここの所長やってたんだ…)

「よぉ」





2番ゲート AM:11:32
「記者のヒトとかモニターのヒトを入れるのは13時からだから
中はからっぽだよ」
「そうか」

「じゃあ いこうか」

「なっ…! なっ…!」

「なんで車やねん!!」
「建物の中なのに…!?」

「距離が長すぎてエスカレーターがつけられないの
中の移動は車が主だよ」





「電波望遠鏡は世界で一番…」
「遠くの物がわかる機械です」

「星々の発する電波をキャッチできるので」
「宇宙の構造がわかります」

「電波の氾濫する都心に作って
平気なんですか?」
「新型なので平気です」

「さらにアンテナと施設を一体化して
低コスト…」
「所長!」
「!」

「施設の方が来られました」
「予定より早かったな…」





「それでは…」
「あとは博士に」

1番ゲート AM:11:38

同刻 展望室
「は〜…」

「たしかにこれだけ広い場所なら」
「学園祭当日なみのリハーサルができるな」





「ほりゃ」

「?」

「なんでボクだけ…」

「衣装合わせだ お前適役だし」
「早く劇の練習始めようぜ!」

「…しっかしエビの格好したスバルかァ」
ださっ
「怒るよ!!!?」





「じゃあラストの戦闘シーンから!」
スバルには超能力がある

物を浮かす能力がある

当然そのことは世間には秘密であり
知っているのは同じクラスのやつらと…

スバルの父さんだけだ

「あ…」





「『あ』じゃねぇ エビ!!!」
「悪が正義滅ぼしてどーする まったく…!!!」
台本を見ろよ!!

「ところで… まさかとは思うがお前の父さんにチケットは渡しただろうな?」
「あれが無いと学園祭の時に 学校に入れないの知ってるよな」

みゃ!!?
(…やっぱり)

「演説のあと所長室のはずだから…」
「急いで渡してくる!!!」





「本当に…よろしいのですか?」

「ええ明日からお願いします」
「スバルをお預けしますよ そちらの…」

「養護施設に」

裏切り者…





裏切り者…!

裏切り者…!!
裏切り者…!!!





「!」





「届く!」
「じゃあ引き上げて!」





(ああっ… いっちょうらがビロビロだ…)
「よかったEV(エレベーター)が無事で…」

(車で来たのはこの階だったっけ?)

「それにしても こんな建物がこんなに傾くなんて…」
「なにがあったんだ」





「ハァ!!」「ハァ!! ハァ!!」

「!!」





「どうしてボクから逃げるのさ…?
おとなしく消えてよ 裏切り者…!!!」





「くそっ!!!」

「ダメだ ヤクト!!!」
「向こうも閉じてる」
「完全に閉じ込められた…!!!」





もう…

使わないと思ってた…
いや…決めていた

「ヤクト お前… それ…」





「さっ 行くぞ!」

「ハッキング…」
「しただろ ヤクト?」

「前にケーサツにつかまってからは…」
「もう しないって言ってたのに」

「自分で自分にした約束を…」
「自分で破るのか!!?」





「!」
「わかってる …でも」

「スバルが父さんにチケット渡せたのか…気になるんだ」

「?」

「さて…」
「そろそろ駐車場みたいだ」





…ゴメンね

その日はちょうど同窓会なの…
父さんも大事な待ち合わせがあってな
だから…

学園祭には行けないの

「とにかく…」
「ここを出なければ始まらない…!!!」





「は〜…」

「見事にめちゃくちゃだな…」
「動く車あるかな…」

「お。 いけりゅ!」





「まっ…」
「待つんだスバル…!!!」

「どーして追い回すんだ…!!?」
「スバル!!?」

「ダマレっ!!! 裏切り者!!!」











「オレだってバカじゃねぇ」

「あんな能力を持った子供だ 親のアンタの気苦労もわかる」
「そりゃ衝突(ケンカ)だってあるだろうけど …けど」

「スバルは能力で誰かを傷つけたりしないヤツだ!」

「お前スバルに なにをした?」

「君たちは…」





「あの仔の能力(ちから)を単なる念動力(サイコキネシス)だと
思っているかもしれないが…
そうじゃない」

「あの仔は“重力”を支配できるんだ」





「あの仔の力はこの星を左右できる力だ」
「だから…」

「妻が死んでから私は地学研究のかたわら…」
「あの仔の体を調べていた… そしてある日…」

「おい ヤクト
おかしいぞ…!!!」
「?」

「オレたち…」

「床にまっすぐ立ってる!!!」





「!!!」
「た、たしかに…」

「そしてある日」
「ほんの少しだが」

「あの仔の能力を機械で再現することに成功した」





「お、おい それって…」
「そして私は…」

「世界に知られずひっそりと
機械をこの施設に組み込んだ」

「そう この…」

「重力波望遠鏡に!」

「なんだ? その重力波なんたらって」





「全ての物質は…重力を発している
それは電波よりも早く正確な情報で
それを利用すれば電波望遠鏡より遠くを…」

「この宇宙の向こう側を」
「!!!」





そうか…
この力で建物を傾けたのか…

能力を…

利用されたことに…

怒ってるのか?
スバル…

「スバル…」
「どうして…」

「どうして?」





「ボクの能力でこの望遠鏡造ったら…
幸せにしてくれるって言ったクセに…」

「ボクを施設に
送るって…」

「き、聞いていたのか!!?」
「それは… スバル…
私の手元ではお前の存在を隠しておくのに
限界が来たからなんだ…」

「お前の力は まだこの世界には早すぎる!!!」

「言い訳はたくさんだ!!!」
「父さんはボクを裏切ったんだ…」
「この望遠鏡ごと消えちゃえ!!!」





なんで…

オレも…なんでって…
どうしてって…

どうして学園祭に行ってやらないんだ!!
あなただってあの仔を避けてるじゃない…!!

だってしょうがないじゃないか…
あの仔は警察に捕まったことがあるんだから

恐いんだ…





「!」

「重力が元に…」





…ちゃんと本気でぶつかっていれば…

「?」





本当は わかりあえるんだ…

「お前…チケットは渡したのか?」
「!」
「!」

「来て欲しいんだろ学園祭に
父さんにさ…」

「ほんとは消えてほしくなんかないんだろ…?」





「もう…」

「持ってるよ」

「スバル…」





「もう少し一緒にいよう」

結局 重力波望遠鏡は…
完成を目前にして 人知れず 崩落してしまう





負傷者のない事故だったのでこのことは
あまり大きな騒動にならず…

オレたちは無事 学園祭に出ることが出来た

何事も無かったように戻ってきた平和
「たぁ」「たぁ」(すげぇ飛行装置)
あいかわらずスバルの力は秘密だったが…

この23年後





スバルの力は なんの問題もなく
世界に受け入れられるようになるが

それは また…

別の話

「あ…」





「スバル…
母さんが…」

「母さんが事故で…」
「…遠くへ 行ってしまったよ…」

「とおくってドコ? 外国…?」

「もっと… 遠くだよ…」

「じゃあそれは」
「あの望遠鏡で見えるような場所?」





「いや…」
「あれじゃ無理だよ…」

「えーっ 木星だって見えるのに…!?」
「じゃあ宇宙の向こうが見える望遠鏡なら見える?
ボク母さんに会いたいよー…!」

「そうだな…」

「そんな望遠鏡があったら会えるかもしれないな…」


〜Fin〜


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